日銀が7月1日に公表した短観(2026年6月調査)に、中小企業の経営者が自分の実感と照合すべき数字が2つ並んでいます。
中小企業の仕入価格DI +76。販売価格DI +40。
DIというのは「上がった」と答えた企業の割合から「下がった」を引いた数字です。つまり、仕入れが上がったと感じている企業は圧倒的多数。一方で、売値を上げられたと答えた企業はその半分ほどしかいない。
差は36ポイント。この36ポイントぶんは、値上げできずに社内のどこかが飲んでいる、ということです。
飲んでいるのは、たいてい「粗利」か「人の時間」
値上げできなかった分の行き先は、そう多くありません。粗利が薄くなるか、社長と社員の残業でカバーするか、どちらかです。前者は決算書に出ますが、後者は決算書に出ないので、たちが悪い。
しかもこのギャップは一時的なものではありません。同じ短観で、中小企業の1年後の物価見通しは+2.9〜3.0%。仕入れはまだ上がる前提で、経営者自身が答えています。
「値上げ交渉」の前に、原価の解像度を上げる
値上げ交渉が進まない理由の多くは、度胸ではなく材料不足です。「うちは苦しいので上げてください」では通らない。「この製品はこの2年で材料費が◯%、運賃が◯%上がり、現在の粗利率は◯%です」と1枚で示せた会社から通っていきます。
ここは、AIが一番地味に効くところです。
- 過去2〜3年の仕入伝票をスプレッドシートに集める
- 品目ごとの単価推移を出す(AIに貼るだけで表とグラフになります)
- 主要な商品・工事ごとに、現在の粗利率を1枚にまとめる
この3ステップは、以前なら経理担当が数日かけていた作業です。今は半日で形になります。
3つ目の道もある
もうひとつ、忘れられがちな選択肢があります。売値を上げるのでも、粗利を削るのでもなく、その仕事にかかる時間を減らすという道です。見積作成、日報、請求書の突き合わせ。ここを月10時間圧縮できれば、実質的に数ポイントの値上げと同じ効果になります。
転嫁ギャップ36ポイントは、全国の中小企業に共通してかかっている圧力です。逆に言えば、ここを他社より先に整理した会社は、同じ市況の中で相対的に強くなります。
合同会社ヨミノワは、秋田を拠点にAI活用の伴走支援を行っています。
