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値段でも宣伝でもなく「あなた」で選ばれる会社が増えている|ヨミノワ

    前回、給料・売値・仕入れの三方向から締めつけられる「万力」の話をしました。逃げ道は「固定費を軽くすること」だとも。では、固定費を軽くした先で、何を売って食べていくのか。今回はその話です。

    最近、こんな会社が静かに増えています。

    ある不動産会社は、店舗を一つも持たずに、創業2年半で300億円分の物件を成約しました。家賃も受付も持たない。代わりに、信頼されている個人(その分野で名前の知られた人)と組んで、その人の「推し」として物件を紹介してもらう。お客さんは「検索」ではなく「この人が言うなら」で動いた。

    ある老舗書店は、絶版になっていた本を「買い切り(返品なし)」で少部数だけ復刊して、黒字に転換しました。きっかけは、一人のスタッフの「この本が好きだ」という熱意です。

    あるマンションの専門家は、デベロッパーから広告費を一切もらわず、自腹で何度もマンションを買い、その経験をもとに有料相談を受けています。1時間3万円超でも、相談は累計2,850件。「お金をもらっていないから中立だ」という立場そのものが、商品になっている。

    共通しているのは何か。会社の看板ではなく、個人の信頼(のれん)で選ばれていることです。

    なぜこうなるのか。理由は二つあります。

    ひとつは人手不足。会社が以前のように大勢の人を抱えられなくなりました。正社員が足りない企業はいまや半数。看板を支える「組織の厚み」が薄くなれば、残るのは「誰がやっているか」です。

    もうひとつは、情報がタダになったこと。ネットやAIで調べれば、たいていのことはすぐ分かる。情報そのものに値段がつかなくなった。すると、「誰の言うことを信じるか」だけが希少になる。目利きと信頼に値段がつくのです。

    ここで朗報があります。これは、小さい会社や個人事業にこそ有利な変化だということです。大企業のような看板がなくても、「この人だから頼む」を作れれば戦える。むしろ大きな組織のほうが、看板が溶けたときに守るものが多くて動けません。

    では、その「のれん」はどう作るか。難しく考える必要はありません。「あなたが本当に良いと思うもの」を、正直に、続けて発信することです。借り物の宣伝文句より、「これが好きだ」という本音のほうが、いまの時代はずっと偽造しにくく、ずっと強い。

    次回は最終回。この変化に水を差しかねない、もう一つの大きな波の話をします。6月の「金利」です。あなたの借入や、これからの設備投資に、静かに効いてきます。

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